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菓子職人/十勝菓子工房 菓音代表 甲賀 静香さん

2015年6月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2015年5月1日時点の内容です

お菓子で伝える「十勝」

見た目の愛らしさに心を奪われる「アートクッキー」。選ぶ人も贈られた人も、温かい気持ちになるお菓子だ。それを北海道・十勝産の素材で手作りする工房がある。地元生産者が精魂込めて作る、生命力に満ちた食材をお菓子というツールに変えて土地の魅力を発信する、女性菓子職人の工房を、帯広市郊外に訪ねた。

地場産の良質な食材で作る

小麦粉、バター、卵...。北海道・十勝の肥沃な大地が育んだ良質な食材を使い、地元でオリジナルの菓子を作っている、甲賀静香さん。それを、北海道内ではなく首都圏を中心に販売する自らの肩書を「お菓子で十勝を伝える人、でしょうか」と話す。

工房「菓音」は、周囲を緑の自然に囲まれた帯広市郊外の一軒家。オーブンや作業台を備えたキッチンと、商品撮影や打ち合わせなどを行うスペースに分かれている。あくまでも「作る」ための場所であり、販売は行っていない。

代表的な商品の一つが「アートクッキー」。卵白と粉砂糖を混ぜた生地を、道産カボチャ(黄)や十勝産アズキの煮汁を煮詰めた粉末(赤)など天然素材の色素で着色し、それを使ってクッキーの土台に繊細な絵を描いていく。

「1色ずつ乾いてから重ねていくため、完成までに数日を要する物もあります」。飾って楽しむことができ、もちろん食べられる。小さなマッチ箱のパッケージに入った、本物そっくりの「マッチ棒クッキー」も人気が高い。

ほぼ独学のため、既成概念にとらわれない発想の菓子が持ち味。例えば、しっとりした食感の「十勝すふれカステラ」には、従来はうどん向きとされる、コシの強い小麦粉「きたほなみ」を使用する。卵やハチミツ、アズキ、生クリームなど素材は純十勝産だ。

菓子の素材選びからレシピ研究、製作、包装までの工程を、甲賀さんは一人で手掛けている。工房を立ち上げる際、2〜3人の体制も考えたが、「描く絵が同じにそろわないし、パーツごとの分担作業になると〝十勝の食を伝えたい〟という思いを込めた商品の本質を守りきれない気がしたんです」

写真左:甲賀さんがお菓子作りに用いる、卵、ハチミツ、小麦粉、ブランデーなど十勝産の食材。可能な限り生産者から直接購入する  写真右: クッキー型は、100種以上を所有。動物型のほか、バレンタインやクリスマスなどイベントや季節に合わせた物も多い

食をきっかけに十勝を訪れてほしい

東京生まれの甲賀さんは、通販会社で商品企画を担当していたバイヤー時代に十勝を訪れ、優れた食材を知った。けれど、すぐに現在の職を志したわけではない。知人の誘いで退職後の2005年に北海道で働き始め、その後雑誌編集に携わる中で生産者と出会って人の輪が広がり、食品会社を経て、菓子職人としてのスタートを切った。

「自分がこれと思える仕事を見付けるまでに、すごく回り道しました」と笑うが、商品パッケージの考案や宣伝用の冊子製作も自らこなし、経験は全て、今の仕事に生かされている。「お菓子をきっかけに十勝を知った人に、ぜひ旅行に訪れてほしい。キッチン付きの宿泊施設で〝暮らすような旅〟を楽しんでもらえたらうれしいですね」 

大地と食と生産者。十勝の魅力をオーブンで焼き上げ、発信する。

写真左:牧場や麦畑、夕日など、十勝の風景を描いたアートクッキー。紙に鉛筆で下絵を描きながらイメージを固める。着色は食用天然色素を使用 写真右:自社販促用の冊子「KANON」(左)と、十勝の自然風景を美しく切り取った「十勝時間」。編集もスタイリングも甲賀さんが手掛けた

PROFILE

甲賀 静香(こうが・しずか)

東京都出身。中央大学文学部卒業後、神戸市の通信販売会社に就職し、商品企画、バイヤーを10年間担当。退職後の2005年、北海道へ移住。帯広市で雑誌編集の仕事を2年間経験した後、同市の食品会社で商品開発、製造、品質管理などを3年間担当。10年に「十勝菓子工房 菓音」を開業した。「十勝の食を伝えるモノづくり」を目指して菓子作りに取り組み、主に首都圏で販売している。

十勝菓子工房 菓音

現在、北海道内に商品の常設店はなく、首都圏の百貨店や雑貨店、自社HP内に開設のオンラインショップにて不定期で販売。HPのお知らせを参照のこと http://www.kita-kanon.jp/

編集:(株)KADOKAWA 文:矢代真紀 写真:細野美智恵(St.Pront)

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2015年6月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2015年5月1日時点の内容です

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