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木工作家/cava craft代表 平子 貴俊さん

2015年11月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2015年10月1日時点の内容です

道産材で木の器を作る

一枚の木の板から、自分でデザインした作品を丁寧に生み出す、木工作家の世界。木肌の色合いや節目はそれぞれに異なり、手で彫り出すことによって唯一無二の物になる。主に道産材で器を作る北広島の作家を訪ねた。

ベンチのある風景が木工を志す原点に

カップもスプーンもお皿も、少し丸みを帯びていて、ほっこり温かい。木工作家・平子貴俊さんが手掛ける作品からは、そんな印象を受ける。

大学で建築・土木を学び、大学院では都市計画を専攻。けれど、会社員生活は肌に合わず「自分の生き方を迷っている時に、たまたま見ていたテレビ番組で、旭川家具が取り上げられていたんです。すごいな、と思い興味を持ちました」と話す。

と同時に、学生時代に旅行で訪れたアジアの国々で見た"ベンチのある風景"の記憶が、よみがえったそう。どこの国にも街角には木のベンチがあり、その場所に人が集まって憩う光景があった。それが印象的だったという。

職業能力開発校に入り直して木工の世界に飛び込み、器から家具までひと通り作れる技術を習得して2011年に独立した。難航したのは工房の物件探し。「札幌で働いた約5年間ずっと、離農した農家の跡地や廃校を探しましたが、なかなか見つかりませんでした」

そこで考え方を変え、札幌郊外で工房兼自宅として一軒家を購入。1階を作業場と展示スペースに使用している。

写真左:自宅兼工房に併設された展示スペースに並ぶ作品の一部。手前のレードルは、映画『ぶどうのなみだ』の中で、主人公が熟成樽(だる)からワインをすくうのに使う物をと依頼され、製作した
写真右:愛用の彫刻刀は約20本。用途により使い分けている。常に刃を研ぎ、メンテナンスを欠かさない

木の表情はそれぞれに違う

独立後に製作したオリジナル作品第1号は、コーヒー豆用のメジャースプーン。コーヒーをこよなく愛する平子さんならではのアイテムで、現在も販売している定番商品だ。

皿やフォーク、カッティングボードなど、食にまつわる作品が多く、主に道産材のヤマザクラとクルミ、輸入材のウォールナットと、色や質感の異なる3種類の木を製作に用いる。木工の仕事の魅力を尋ねると、「自分でデザインして、作りたい物を作れるところです。板の状態から、切って削って仕上げまで、一人で手掛けられますからね」と平子さん。

そもそも、木を削る作業そのものが楽しいのだという。「木工と並行して陶芸や革細工も習ってみたことがあるんですよ。でも、やっぱり長く続けるなら木だなと」。周囲からは、同じ作業の繰り返しでよく飽きないね、と言われるそうだが「木の表情はそれぞれ違います。出来上がる作品も、彫り跡が同じ物はありません」

現在はオーダーによる受注製作と、雑貨店やイベント等での販売が中心。取材日は、京都の器店に納品する皿を製作中だった。「今後はイスやテーブルなどの家具も、もっと作っていきたい」と平子さん。もし、家具も器も「cava craft」の作品で統一された空間ができたなら、きっと人の心を和ませてくれるに違いない。

写真左:型紙を作って製作中だったオーバル型の木皿。物によっては、直接、板に鉛筆で型を手描きすることもある
写真右:道産材のヤマザクラを使った、制作途中の器。1日に削り出せるのは、手前の小皿で10枚ほどだそう

PROFILE

平子貴俊(ひらこ・たかとし)

1971年、帯広市生まれ。室蘭工業大学大学院修士課程修了後、建設コンサルタント会社に2年間勤務し、退職。99年、旭川高等技術専門学院に入学して2年間木工を学び、旭川市内の家具工房に入社。4年間勤務し、2005年に札幌に移住。家具・建具の製作所に勤務しながら工房の物件を探し、11年に独立。北広島市で「cava craft」を立ち上げ、現在に至る。北海道・空知地方を舞台にした映画『ぶどうのなみだ』(14年公開)の中で、平子さんの作品が数点、小道具として使用された。

DATA

cava craft

北広島市山手町7丁目4-1
TEL:090・9513・1513
http://cavacraft.com/

編集:(株)KADOKAWA 文:矢代真紀 写真:齋藤義典

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2015年11月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2015年10月1日時点の内容です

raporaはAIRDOが発行する機内誌です。
最新号はぜひ機内でお楽しみください。

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