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ホラネロ 谷藤万喜子さん・本田優一郎さん

2016年2月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年1月5日時点の内容です

オホーツクの風土が音楽に融合

冬は海を流氷が埋め尽くす、オホーツク。道東の風土とそこに住む人々の魅力が今、世界でここだけの新しい音に形を変えている。東日本大震災の年にチャリティーで演奏した、福島県の子守唄「ホラねろねんねろ」がユニット名の由来という、2人の楽屋を訪ねた。

黒曜石も流氷も音楽になる

オホーツク沿岸の遠軽町を拠点に、国内で精力的な音楽活動を続ける夫婦ユニット「ホラネロ」。2012年に東京から家族で移住した。大学の先輩後輩として音楽を学び、妻の谷藤万喜子さんがフルート、夫の本田優一郎さんが作編曲とギターを担当する。

ことし1月からAIRDOの機内オーディオでも流れている、彼らの演奏。ジャンルを尋ねると「広い意味でのテロワール・ミュージック(風土音楽)ですね」。民謡や子守唄など、日本古来の音楽を独自のアレンジで奏でる一方で、地産品を生かした曲作りも。

その一環が、オリジナル楽器の製作だ。例えば「白花笛」は、北見市留辺蘂(るべしべ)町の名産品・白花豆の栽培に支柱として使う「女竹(めたけ)」が材料。万喜子さんの父親で尺八奏者でもある谷藤紅山氏の手により、笛に加工された。「初めてステージで吹くまでの1カ月間は、猛練習しました」と万喜子さん。

さらに、今春発売のニューアルバムの楽曲には、刻んだ麦の茎が内部でギターの弦に当たって音が鳴る、筒状の新楽器「蝦夷(えぞ)スティック」を導入。これは「道東の広大な畑で、麦の穂が風にそよぐ音」を表現したいと考案し、板金職人の知人に製作を依頼した。

作編曲を主に担当する優一郎さんは、風土に由来する多様な"音集め"も手掛ける。現在、家族が暮らす遠軽町は、世界的な黒曜石の産地。町の埋蔵文化財センターで収録した、黒曜石をエゾシカの角で割る際の粉砕音を、リズム音に生かした楽曲もある。

他にも、冬のオホーツクの風物詩である流氷の"鳴き音"や、粉雪を足で踏みしめる時の音などを曲に取り入れている。

写真左:ツアー先にも持参する、お気に入りのコーヒー豆とミル。豆を保存するブリキ缶は、友人である東京の雑貨デザイナーの作品
写真右:遠軽町産の黒曜石と、手作りの「白花笛」。万喜子さんは白花豆の名産地・北見市留辺蘂町で小中学生時代を過ごした

地元の人との出会いが新しい発想を生む

「地元を愛する人たちとの出会いを介在して、初めて生まれる発想があるんです。例えば黒曜石も、ただ眺めるだけでなく、学芸員の方から歴史について詳しい解説を聞くと、より興味が湧きますよね」と優一郎さん。

2人は第13代オホーツク観光大使を務め、ライブの背景の映像は、道東の風景がモチーフ。今季のツアーでは、新アルバムのテーマである麦を装飾に使う。東京の演奏会では、本物の流氷の塊を会場に展示して喜ばれたことも。親子で訪れるファンも多く、「聴いて、見て、触って楽しんでほしい」という。

そして、彼らの生の演奏を一度聴けば、この斬新な取り組みが、クラシックで研鑽(さん)を積んだ確かな基礎と高い演奏技術があってこそのものだと、分かるはず。自然豊かな道東での生活によって、ホラネロの音楽性は今後、さらなる広がりを見せてくれるに違いない。

写真左:レインスティックならぬ「蝦夷スティック」。屋根などに使うトタンでできている。小川のせせらぎや雪が降り積もる音など、聴く人によって感じ方が異なる、オリジナル楽器
写真右:コンサートグッズのバッグとタオル。CDジャケットと共に、津別町在住のイラストレーター・大西重成さんがイラストを手掛ける

PROFILE

フルート/谷藤万喜子(たにふじ・まきこ)

島牧郡島牧村生まれ、オホーツク育ち。東京芸術大学大学院音楽研究科修了後、東京都内ほかのオーケストラ・室内楽で演奏を続ける。2001年に結婚、12年に紋別郡遠軽町に移住。それを機に夫婦ユニット「ホラネロ」を結成。オホーツク音楽工房主宰。

作編曲・ギター/本田優一郎(ほんだ・ゆういちろう)

東京都生まれ。東京学芸大学教育学部音楽科卒業後、宇多田ヒカルや大黒摩季ら、さまざまなアーティストの作品やライブに作編曲、ギターリストとして参加。

DATA

CD「ヒンメリア」 ホラネロ

北海道の代表的な農作物「麦」をテーマに、オリジナル楽器"蝦夷スティック"の音色を演奏に取り入れた「ヒンメリア」や、北海道の屋根・大雪山をイメージした「カムイミンタラ組曲」他を収録する、ホラネロの3rdアルバム。今春リリースし、HPにて販売予定。
http://www.horanero.com/

編集:(株)KADOKAWA 文:矢代真紀 写真:齋藤義典 撮影協力:レストラン「のや」(札幌市中央区)

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2016年2月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年1月5日時点の内容です

raporaはAIRDOが発行する機内誌です。
最新号はぜひ機内でお楽しみください。

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