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8mmフィルム工房 代表 阪口あき子さん

2016年6月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年5月1日時点の内容です

古いフィルムから思い出を再生

全国から古い8ミリフィルムが集まる会社が函館にある。丸いリールに巻かれたフィルムの中には、劣化によってゆがんだ物も多いが、持ち主にとっては大切な思い出が詰まった宝物。若くして起業した代表の女性を訪ねた。

函館に移住し、29歳で起業

映像の記録媒体は、時代と共に変遷を遂げてきた。DVDディスクの前はビデオテープが主体であり、それ以前に家庭用に流通していた8ミリフィルムに至っては、今や見たことすらない若者も多いのかもしれない。

1970年代に使用のピークを迎えた後、家庭の中で埋もれ、再生できなくなった8ミリフィルムを修復し、DVDに編集する作業を手掛けているのが、函館市の映像制作会社、シンプルウェイが運営する「8㎜フィルム工房」だ。代表取締役の阪口あき子さんが起業を決意したのは、大学時代のこと。

「イベント企画などの経験を通して、人を集め、創意工夫をして主体的に作り上げるという作業が、自分に向いていると思いました」と語る。7年間社会経験を積み、夫の移住に伴い函館へ。それまで旅行ですら訪れたことのない「新天地での起業」に対する迷いは、不思議と感じなかったという。

仕事の根底には「まだ世の中にないサービスに挑戦したい。それによって誰かが幸せになり、自分も幸せな気持ちになれるのが理想」との思いがある。その原点は祖父が自分や家族を撮影した8ミリフィルム。「大学時代、映写機が壊れて見られなくなった8ミリを独学でビデオテープに変換したんです。すごく喜ばれて、うれしかったですね」

写真左:仕事の原点となった、自分の成長記録の8ミリフィルム。「撮影した祖父はおちゃめな人で、冒頭に必ず自分も映してあるんですよ。上映することで、また新しい思い出が生まれます」
写真右:DVDを受け取った多くの客から、喜びと感謝の声が届く。礼状はすべてファイルしてある

劣化したフィルムの修復技術で特許を取得

8㎜フィルム工房では、古い8ミリやビデオの映像をそのまま変換するのではなく、依頼者が必要な部分のみを編集して渡す。そうすることで、「ただの記録」ではなく「思い出が詰まった大切な作品」になるからだ。

その中で困難だったのが、劣化でゆがんだフィルムの修復。開業当初は断っていたが、ニーズに応える道を模索し、やがて京都在住の修復師と巡り合う。彼と北海道立工業技術センターの協力を得て化学による独自の修復法を開発し、3年前にはその修復技術で特許を取得したというからすごい。阪口さんの熱意と並外れた行動力が、実を結んだ瞬間だった。

阪口さんが手掛ける事業は幅広く、函館の観光CM「イカール星人」のプロデュースや、観光情報サイト「はこぶら」の運営も担当。「歴史や自然、温泉やグルメ。函館には多面的な魅力があり、暮らしていて飽きない街です」

現在は、青森と道南エリアの女性約70名が青函圏の町おこしに取り組む「津軽海峡マグロ女子会」の北海道側事務局としても奔走。自称「マグ女(じょ)」は、休む間もなく泳ぎ続けている。

写真左:保存状態が悪く、劣化してゆがんだ8ミリフィルムの実物。独自に開発した技術で修復する
写真右:2009年に出願し、13年に8mmフィルム工房が取得したフィルム修復技術の特許証

PROFILE

阪口あき子(さかぐち・あきこ)

1973年、静岡県出身。静岡県立大学国際関係学部卒業後、求人情報サービス会社に勤務、主に営業職を担当。2002年に退職し、夫と共に函館に移住。03年に(株)シンプルウェイを設立し、個人向け映像制作サービスに取り組む。05年に8mmフィルム工房、09年にビデオダビング工房を開設し、13年に劣化フィルム修復技術の特許取得。一方で、函館CM「イカール星人」の作品プロデュースや、函館市公式観光情報サイトの運営なども手掛けている。

DATA

8mmフィルム工房

函館市本通1-26-12
TEL:0120・808・622
9:00〜18:00
http://omoide.tv

編集:(株)KADOKAWA 文:矢代真紀 写真:齋藤義典

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2016年6月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年5月1日時点の内容です

raporaはAIRDOが発行する機内誌です。
最新号はぜひ機内でお楽しみください。

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