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羊飼い/石田めん羊牧場 代表 石田直久さん

2016年7月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年6月1日時点の内容です

よりおいしい羊肉を目指して

数多くのフランス料理のシェフたちが絶大な信頼を寄せる羊肉の生産牧場が十勝にある「石田めん羊牧場」だ。牧羊犬のしつけも羊に与える飼料配合もほとんどが独学という羊飼いの世界とは。

生産から販売まで自分の手で

かわいい羊のイラストが描かれた名刺には「羊飼い」の肩書。羊肉供給の大方を輸入に頼る日本で、この職名を持つ人は、非常に少ないはずだ。

大学院で羊の受精卵について研究していた石田直久さんは、研究者の道を歩むつもりだった。修了直前になって別の道を選択した理由を尋ねると、「当時、自分の周りで羊を飼っている人たちは、みんなすごく貧乏だったんです。でもなぜか目だけはキラキラ輝いていて、楽しそうでした。自分はこんなふうに仕事を楽しめるだろうかと、疑問を持ちました」

人生を180度方向転換し、2年間の実習を積んだ後に新規就農先を探したが、これが難航を極めた。「羊はそのころ家畜として認められていなかったので、農業でもないと言われて」。やっと足寄(あしょろ)町で借りられた土地は2ha。家は古い廃屋を修理して電気を引き、「石田めん羊牧場」として、20頭の羊との新生活が始まった。

最大の危機が訪れたのは3年目。隣の10haを借りる予定で、頭数も増やし準備していたところ、土地の持ち主が急逝する。話は白紙に戻り、「一度は辞めることも覚悟しました」。その後、何とか別の土地を借りられたのは、「それまでの頑張りを見ていてくれた町の人の、後押しがあったおかげです」

写真左:牧羊犬に指示を出すホイッスル。5匹のボーダーコリーそれぞれ、合図の音は違うのだそう
写真右:主戦力のベテラン牧羊犬、キューブ。石田さんが笛を持っただけで身構え、顔つきが変わる

羊乳を活用し今春から自家製チーズを製造

開業から16年目を迎え、牧場は20ha、飼育する羊は約600頭に増えた。その間に安全で食味の良い国産の羊肉に注目が集まり、流通価格も上昇。現在は札幌のレストランを中心に全国から多数のオーダーを受けている。とはいえ、出荷予定日になっても羊の生育が満足いく状態にならなければ、出荷はしない。「かなりわがままな生産者ですよね」

この仕事の魅力を「自分が育てた羊に対する消費者の声を、直接聞けるところ」と石田さん。肉質、味わい、香りなどについて、調理人や食べた人の感想が届くことが、何より励みになるという。だからこそ、妥協はできない。

牧場がある足寄町内にも羊肉を食べられる店をと、2013年には直営レストラン「ヒツジ堂」をオープン。昨年は、勉強のためフランスとスペインの牧場を訪ねた。さらに今春からは自家製チーズの製造に着手。「羊乳の活用は課題のひとつでしたし、チーズの仕上がりも楽しみです」

ちなみに同業者が顔を合わせても、飼育法について情報交換することはないそうだ。「羊は群れる動物ですが、羊飼いは群れないんですよ」と笑った。

写真左:風味豊かで肉質が繊細なサウスダウン種を主体に約600頭を飼育する。夏季は基本的に放牧飼育で「時々、逃走する羊もいます」。広い草原を白い羊がゆっくりと歩く牧歌的な風景はのどかで、心が和む
写真中央:毛刈り用の大型のバリカンは「日本に2台しか入ってないはず」というイギリス製。モーター部分を下げる台は手作りした
写真右:毛皮部分のムートンも販売する。羊毛を含め、「羊からいただくものはムダなく活用します」

PROFILE

石田直久(いしだ・なおひさ)

1974年、山口県生まれ。帯広畜産大学大学院修士課程修了。2年間の現場実習を経て、2001年に羊飼いとして独立し、足寄郡足寄町への新規就農で石田めん羊牧場を立ち上げた。サウスダウン種を主体に飼育し、生産から処理加工、販売までを一貫して手掛ける。2013年には羊肉を使用した料理各種を味わえる牧場直営レストラン「ヒツジ堂」を同町内にオープン。羊肉を札幌や東京のフレンチレストランを中心に出荷する他、原毛やムートン、羊皮紙、羊毛から作るフェルト小物などもウェブサイト上で販売する。

DATA

石田めん羊牧場

北海道足寄郡足寄町中矢7-1
http://www.ishida-sheep-farm.com
※観光牧場ではないため、毛刈り等の体験希望者はHPから連絡を

ヒツジ堂

北海道足寄郡足寄町南1-1-14
TEL:0156・25・6810
12:00〜14:30、18:00〜21:00(季節により変動あり)※日曜日は12:00〜19:00
休日:水曜日(月1回連休あり、臨時休業あり)

編集:(株)KADOKAWA 文:矢代真紀 写真:齋藤義典

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2016年7月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年6月1日時点の内容です

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