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農家/シゼントトモニイキルコト代表 曽我井陽充さん

2016年9月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年8月1日時点の内容です

植物は夜行性なんです

プロスノーボーダーから農業に転職した異色のファーマーを道南の今金町に訪ねると、日に焼けたとびきりの笑顔で出迎えてくれた。畑の土を従来のバランスに戻して環境を整える有機栽培に取り組み、仲間と共に広く活動を続けている。

野菜が自生できる土の環境を整える

のどかな田園風景が広がる、道南の今金町。訪れた人の多くが「自然があっていいですね」と口をそろえるが、「畑は人間がつくる疑似空間で、自然本来の姿ではないんですよね」と、地元で農業を営む、シゼントトモニイキルコト代表の曽我井陽充さんは話す。

ソガイ農園の5代目長男として生まれ育ったが継ぐ気はなく、システムエンジニアを志して大学へ。そこでスノーボードに出合い、卒業後はプロスノーボーダーとして国内外を転戦。多い時は年間300日を雪山で過ごす中で、「自然と近い暮らしっていいな、農業もいいかもしれないな、と考えが変わりました」

2000年に父親が急逝し、地元に戻って跡を継いだ。知識ゼロからの出発で、当初は父がカレンダーに書き残したメモを参考に作業を進めたという。無農薬栽培に心が傾いたのは、約2年後のこと。「購入に印鑑が必要な(劇薬の)農薬を使ったトマトやキュウリを、畑を手伝いに来てくれた後輩たちが、うまいうまいと食べてくれるのを見て、後ろめたく感じる自分がいて」。独学で勉強し、やがてトラクターで土を耕さない「不耕起」にたどり着いた。

現在は約30種のミニトマト栽培と稲作が中心で、農地は8ha。計12棟のハウスが立つが、最長でもう12年、トラクターを入れていない。「それはもともと、土の中の微生物や虫たちの役割なんですよね。生態系を考えながら、自然のサイクルに近づけて、野菜が自生できる力を引き出す環境を整えることが自分の仕事」と話す。また、新鮮な野菜には「朝採れ」という売り文句がよく使われるが「うちでは午前中には野菜を収穫しません。植物は夜行性で、日が昇ってから眠る間に養分の変化が起こる。状態が良いのは実は午後なので」

写真左:日々持ち歩く、作業用のはさみと手袋。はさみは消耗が激しいため、箱買いして常にストックしてあるそう
写真右:愛用のスマートフォンで日々、記録も兼ねて作物の生育状況を撮影し、SNSなどで発信。「情報発信も大切な仕事の一つです」

「楽しい事」が活動の基準

シゼントトモニイキルコトという屋号は、もともと自然が好きなクリエーター仲間のユニット名でもある。自然環境と食を考える中で、イベント参加などを含めた曽我井さんの活動範囲は幅広く、冬期間は主に自分が野菜を納めている札幌のレストランで働く。全て「自分にとって好きな事」が基準なのは、スノーボーダー時代の経験から。「滑るのが仕事になった途端、楽しめない自分がいて。楽しくないと続けていけないと思いました」

曽我井さんにとって農業は、単に作物を育てることではなく、一つの文化であり自然と共存するライフスタイル。今後の目標を聞かれた時は、いつも必ず「世界平和」と答えている。

写真左:秋野菜のトマトは、8月後半からが収穫のピーク。取材日の時点ではまだ色づき始めたばかりだった。約30種のミニトマトを育て、写真の品種は「アイコ」の赤。暑さに弱いため温度管理に気を使う
写真右:自社で加工・販売するトマトジュースやソース。ラベルのイラストはリリー・フランキー氏によるもの

PROFILE

曽我井陽充(そがい・はるみつ)

1973年、瀬棚郡今金町生まれ。北海道情報大学卒業後、プロスノーボーダーとして活躍。2000年シーズン終了後に引退。01年よりソガイ農園を5代目として継ぎ、野菜や稲作他の農業を始める。現在の屋号「シゼントトモニイキルコト」は、当時から、同業者やデザイナーなど自然が好きな仲間が集まって活動していたユニット名。07年に法人化し、トマトジュースなど野菜の加工品販売を開始。現在は、NPO法人シゼトモoikosの理事長も務め、イベント立案など、広く活動中。

DATA

シゼントトモニイキルコト

瀬棚郡今金町神丘1033
http://farming.shop-pro.jp/
※収穫体験などの問い合わせはHPからメールで受け付け

編集:(株)KADOKAWA 文:矢代真紀 写真:齋藤義典

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2016年9月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年8月1日時点の内容です

raporaはAIRDOが発行する機内誌です。
最新号はぜひ機内でお楽しみください。

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