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都市との交流で町を活性化。新しい里づくりに挑む黒松内「アンジュ・ド・フロマージュ」[黒松内町]北海道の最も美しい村/美しい村の食卓

2015年9月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2015年8月1日時点の内容です

緑豊かなニセコエリアの西側に位置し、「ブナ北限の里」として知られる黒松内町。田舎暮らしに憧れて移住する人も増えた町でチーズ工房&レストランをはじめた仲間たちののどかな田園生活をのぞかせてもらった。

写真:牛舎を改装した「アンジュ・ド・フロマージュ」のレストラン兼チーズ工房。景観保護のため、外観は町の指定色でリニューアル

札幌市と函館市のほぼ中間に位置する黒松内町は、人口3000人余りの小さな農村だ。道内ではアウトドア好きの人なら、黒松内と聞けば「ああ、ブナ北限の町ね」「あそこのオートキャンプ場いいよね」と即答するほど知名度は高く、フットパスや自然体験プラン、ウオーキング企画などが充実している。

写真左:町の木のブナ。歌才ブナ林の駐車公園でも見られる
写真右:「アンジュ〜」で放し飼いにされているヤギたち

黒松内のシンボル・北限のブナ林は、1928(昭和3)年に天然記念物に指定されており、選定に向けて調査に訪れた林学研究者は、すらりと伸びたブナを「北のヤシの木」に例えたという。

太平洋戦争末期には木製戦闘機のプロペラ材にするため、戦後は当時の村の財政危機を救うために、伐採計画が進められたこともあるが、ブナ林の学術的価値を訴える教授や住民有志の熱心な反対で阻止された。二度の危機を回避できなければ、今の黒松内は何を町の宝としていただろう。

少子高齢化時代を迎え、黒松内では町の活性化を図り、都市との交流や移住者の誘致を進めている。田舎でチーズ作りをする夢を実現した「アンジュ・ド・フロマージュ」の皆さんに、住んでみて分かった黒松内の魅力を語ってもらった。

生産地直結の工房と店舗で幸せを分かち合いたい

黒松内町の一軒の古い牛舎が、チーズ工房とレストランを併設した「アンジュ・ド・フロマージュ」に生まれ変わってから5年。代表・西村聖子さんは「冬は雪が多くて大変だけれど、ここに来て本当によかった。景色がいいし、町の人たちがみんな親切」とほほえむ。札幌で通好みのパティスリーを営んでいた西村さんが移住したきっかけは、農場跡地を活用した研究実験施設の指定管理者募集だったという。

写真:オイル漬けや白カビ系、セミハードタイプなどのチーズが季節により7、8種類そろう。チーズセットは¥800

チーズ作りに関心を持ち、勉強中だった西村さん。大阪から札幌近郊の酪農学園大学へ進学し、道内の乳業会社に就職した射場勇樹さん。そして、道内有数の老舗チーズ工房で経験を積み、射場さんの母校で技師を務めていた三浦豊史さん。3人が「生産地に直結した場所で食を追求したい」という夢を絆として手を取り合い、黒松内で工房兼店舗を構えた。

写真左:チーズ作りの夢でつながった代表・西村聖子さん(写真中央)、工房長・三浦豊史さん(右)、農場長・射場勇樹さん(左)
写真右:三浦さんは30年の経験を持つベテラン職人。チーズ作りはまだまだ奥が深いという

西村さんはパティシエール兼シェフを務め、射場さんはフレッシュチーズを中心とした製造、三浦さんは伝統的なカビ系やハード系のチーズ製造を担当。少量多品目の製造を2人で分担する。三浦さんいわく「職人ならどんなチーズでも作れると考えるのは、ピアニストは音楽家なのだからバイオリンも弾けると思うのと同じ」なのだとか。

写真左:熟成庫で静かに眠り続けるチーズ  写真右:店内に飾られた楽譜は、ジャズピアニスト・野瀬栄進さんがこの店のために作曲したもの

地元の酪農家の牛乳や、自分たちで育てたヤギの乳で手作りするチーズは、レストランからの受注もあり、通販や百貨店の物産展でも人気が高まってきた。

冬の間、都市から離れた田園での営業は大変なのでは? と聞くと、射場さんが「冬はニセコに長期滞在する海外のスキー客が、たくさん買ってくれるんですよ。特に個性の強いタイプのチーズが喜ばれます」と答えてくれ、意外な地の利に驚いた。

写真左:そば粉のガレット¥1,200(手前)、ビーフシチュー¥1,500(奥)。いずれもコーヒーまたは紅茶とデザート付き
写真右:西村さんがよりすぐりの素材で作るスイーツは、ケーキセット¥850でイートイン可

西村さんの札幌時代の人脈が生き、店内で開く食の講演会やコンサートには、遠くからもリピーターが訪れる。

店舗の移転は札幌のスイーツ好きに惜しまれたが、黒松内の自然に囲まれて食を楽しむのは至福の時間だ。山菜入りやワインの搾りかすに漬け込んだタイプなど、季節限定のチーズを味わいに何度でもここに来たいと思った。

DATA

アンジュ・ド・フロマージュ [黒松内町]

住所:寿都郡黒松内町赤井川114
TEL:0136・75・7400
販売 10:00〜17:30(積雪期11:00 〜17:00)、カフェ 11:00〜16:00
※要予約でランチ、ディナーのコース利用も可
休日:水曜日(祝日の場合は翌日に振替)※カフェは不定休
交通:新千歳空港より道央自動車道黒松内JCTを利用、車で約2時間
http://www.ange-seiko.com/fromage/
※チーズは新千歳空港内「Wine&Cheese北海道興農社」でも販売

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2015年9月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2015年8月1日時点の内容です

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