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生きた伝承文化を体感できる野外博物館「アイヌ民族博物館」 [白老町]今、北海道の博物館が面白い!北海道ミュージアム巡り

2017年1月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年12月1日時点の内容です

写真:冬は分厚い氷が張るポロト湖。スケートやワカサギ釣りが楽しめ、野外アートの展示も行われる

なぜか心引かれる歌と踊り。素朴な音色に癒される楽器

耳慣れた邦楽や洋楽とは違う、神秘的な旋律の歌声。空高く舞う鳥の声のように、静かな空間に響き渡る合いの手。力強く大地を踏みしめ、息を合わせて舞う民族衣装の人々。生の舞台で鑑賞する古式舞踊は心に染み入り、思わず息をのむ迫力だ。

原生林に囲まれた湖畔に広がる野外博物館「アイヌ民族博物館」は、ポロトコタン(大きな湖の集落)の名で親しまれ、伝承文化の実演を間近に見られる〝生きた博物館″。中でも1日8回の公演が行われる古式舞踊は、ユネスコ無形文化遺産のひとつ。自然への畏敬の念や、生命の息吹を感じさせ、北海道を訪ねる人にぜひ見てほしい。

写真左:イオマンテリセ(熊の霊送りの踊り)。人間の世界への再訪を願い、キムンカムイ(山の神=ヒグマのこと)を、神の国へ送り返す儀式で踊られる
写真中央:樺太アイヌの間で伝えられた五弦琴のトンコリ。澄んだ柔らかな音色が、優しく心に残る
写真右:伝統楽器のムックリは、竹を削った板に糸を結んだシンプルな構造。板を弾いた音を口の中に反響させ、音を複雑に変化させる

アイヌの人々が雨や川のせせらぎ、鳥の声をイメージし、自分の感情を自由に表現してきたという小さな楽器ムックリ(口琴)や、主に樺太(現在のサハリン)に伝わるトンコリ(五弦琴)は、事前に予約すれば体験学習もできる。ムックリは鳴らすコツをつかめると、音色の変化が実に面白い。

写真左:第2・第4土曜日(変更の場合あり)はいろりを囲んで、神謡や英雄叙事詩などの口承文芸を聴く企画「オルペ アヌ ロー!」も開催
写真右:男性が弓を持って舞う、勇壮なクリセ(弓の舞)。鳥を見つけた狩人が、鳥のあまりの美しさに射るのを迷う場面が演じられる

自然と調和した文化が伝えてきた祈りと誇り

この博物館の50人の職員のうち、半数がアイヌのルーツを持つという。白老町だけでなく、北海道各地や道外からも、伝承文化を守り、発信したいと願う男女が集まってきた。若い世代の職員が「楽しく美しく、豊かなアイヌ文化の素晴らしさを伝えたい」と語る博物館は活気にあふれ、国内外からの観光客でにぎわっている。

「研究機関というより、テーマパークのような感覚で楽しめる施設です。職員も積極的に来館者の皆さんと交流しているので、気軽に声を掛けていただければ」と語るのは、学芸課係長の八幡巴絵さん。古式舞踊の披露もする〝歌って踊れる学芸員″だ。アイヌの人々は古来から文字を持たず、口伝えで文化を伝えてきた。直接話すことを重んじる精神風土が、今もこの地に息づいているのだろうか。

写真1:1984(昭和59)年に博物館の新館がオープン。約6,000点の収蔵品から約800点を常設展示
写真2:多彩なシトキやタマサイ。ガラス玉は、特に濃い青のものが好まれたそう
写真3:アワ、イナキビ、ヒエ、ギョウジャニンニクなど、植物系の食材は実物のサンプルを見られる
写真4:アイヌ文化の世界観を、ビジュアルで分かりやすく学べる展示
写真5:神々への祈りや漁、機織り、ござ織りなどの場面をリアルに再現

昔はどんな暮らしだったのか想像をかき立てる多彩な展示

屋内の展示物にも注目したい。酒を神々にささげる際に用いるイクパスイ(捧酒箸)、伝統文様を彫刻したイタ(盆)やタンパ(たばこ入れ)、ストゥ(刑棒)をはじめ、さまざまな道具が展示されており、使われていた様子を想像するのも面白い。特に衣類は、オヒョウなどの樹皮で織ったアットゥ、イラクサなどの草の繊維を使ったテタラぺ、交易によって入手した木綿で作られたルウンペやチヂリ(いずれも木綿衣の一種)などが並び、個性あふれるデザインと丁寧な手仕事に目を奪われる。

衣装には和人の着物の生地をあしらったものもあり、彩り豊かなタマサイ(玉飾り)のガラス玉は、大陸や本州などから入手したといわれている。昔から外来品も良いと思えば柔軟に取り入れ、おしゃれを楽しんでいたそうだ。

写真左:博物館が監修したアイヌ民族の生活文化小百科「アイヌ文化の基礎知識」¥1,728(手前)、明治末から昭和初期の風俗を写した「木下清蔵遺作写真集 シラオイコタン」¥1,404(奥)
写真右:トゥレアカ(オオウバユリの乾燥団子)。でんぷんが混じった繊維質を乾燥させて作る保存食

別棟のポンチセ(小さい家)では手工芸の実演を見学でき、ポロチセ(大きい家)では、自撮りで人気の衣装(300円、予約不要)を借りられる。ヒグマや北海道犬の飼育コーナーや、温かい汁物のオハウ、どんぐりの粉を練り込んだニセウうどんといった、伝統食や伝統食材をアレンジしたメニューが味わえるカフェにも立ち寄りたい。

写真:薄い生地で仕立てたカパラミ(木綿衣)。白い布を切り抜いた文様を縫い留め、さらに刺しゅうも

写真左:かやぶきのチセ(家)5棟と、ヌササン(祭壇)、チ(丸木舟)などを復元・展示し、コタン(集落)を再現している
写真右:"歌って踊れる学芸員"として伝統文化を伝える学芸課係長の八幡巴絵さん(右)、施設のPRに尽力する渉外広報課課長の西條林哉さん(左)

写真左:アイヌ文様刺しゅう体験は、コースター1枚で所要時間約60分。2〜40人に対応。1人¥540
写真右:ムックリの基本を学ぶ演奏体験は、所要時間30分。2〜300人に対応。1人¥540 ※いずれも要予約

写真左:塩と油で味付けした具だくさんの汁物のオハウ単品¥450、セット¥800をカフェで提供
写真右:伝統的なヒエの酒を小樽発で復刻。「カムイトノト」(300㎖)¥1,300

写真:民族衣装をまとい、プロのヘアメークと撮影で、フォトブックやフォトDVDを制作できる。要予約

写真:ミニ財布¥1,500(手前)。
タマサイ¥1,300(中)、ルウンぺ¥1,500(奥)のストラップ

現代の子どもたちに伝えたい、自然への感謝と話し合いの心

アイヌ文化には、私たち現代人が学びたい点がいろいろある。例えば、自然からは自分たちに必要な分だけをもらい、植物や動物が次の世代を残せるよう、根こそぎ取らないこと。集団の中で秩序に反するもめ事があれば、とことん話し合って解決すること。このチャランケ(談判)の精神は、教育旅行の子どもたちには、良い人間関係作りのヒントとして伝えられている。

余談だが、ショップに気になる商品があった。やけどに効くというヒグマの脂だ。7000円と高価で手が出なかったのだが、購入して試した方にぜひ感想をお聞きしてみたい。

DATA

アイヌ民族博物館 [白老町]

北海道白老郡白老町若草町2-3-4
TEL:0144・82・3914
8:45〜17:00
休日:2017年1/1(祝)〜1/5(木)は休み
料金:入館料大人¥800、高校生¥600、中学生¥500、小学生¥350
※体験メニューの料金はお問い合わせください
交通:新千歳空港より道央自動車道白老IC利用で車で約1時間、JR白老駅より徒歩13分
http://www.ainu-museum.or.jp

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2017年1月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年12月1日時点の内容です

raporaはAIRDOが発行する機内誌です。
最新号はぜひ機内でお楽しみください。

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