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今最も新しい知のテーマパーク!「北海道大学総合博物館」 [札幌市]今、北海道の博物館が面白い!北海道ミュージアム巡り

2017年1月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年12月1日時点の内容です

写真:1929(昭和4)年築の、学内で最も古い鉄筋コンクリート造りの旧理学部本館。現在は博物館と理学部で共用している(写真提供:藤田良治/北海道大学高等教育推進機構准教授)

世界初、実物、原寸大が豊富な北のキャンパスミュージアム

人工衛星、光ファイバー、地震計、実際に打ち上げに使われたハイブリッドロケット、世界初の人工雪の画像や300万点にもおよぶ標本群―。一つ一つを研究し、発掘、開発した人々にも圧倒されるが、その偉業を展示してしまおうと発想した人々の仕掛けもすごい。双方の仕事のすごさに驚かされるのが、「北海道大学総合博物館」だ。

北海道大学が、市民や観光客にとって親しみやすい名所である理由は三つある。一つは歴史。北海道大学の前身は1876(明治9)年に開校した札幌農学校。新天地の開拓を担うスペシャリストを養成する学校として誕生した札幌農学校は、初代教頭に迎えたマサチューセッツ農科大学の学長ウィリアム・S・クラークの「ボーイズ ビーアンビシャス」の理念の下、優れた人材を続々と輩出した。その結果、明治以降の北海道の発展に大きく寄与していて、開拓の歴史と農学校には密接な関係が結ばれている。

写真:北海道大学の前身、札幌農学校の歴史の紹介展示にあるW・S・クラークらのパネル[北大の歴史]

二つ目は自然あふれる広大なキャンパス。札幌キャンパスの敷地面積は約177万6000㎡、地方施設などを含めた総面積は6億㎡以上と日本一。構内には各学部棟の他、病院や図書館、農場やグラウンド、食堂もあり、四季折々の彩り豊かな風景が広がる。市民にとっても人気の散策コースだ。

写真左:右側の薄紫色の石が天然の石英の結晶。左側の人工の結晶の方が不純物がないため透明感がある
写真右:試験発射した後、パラシュートで落下したCAMUI型ハイブリッドロケット[北大のいま-産学・地域協働推進機構]

写真左:絶滅した水生哺乳類「デスモスチルス」の全身骨格標本。1933〜34年に長尾巧教授が世界で初めての全身骨格を樺太で発見
写真右:1936(昭和11)年3月12日に世界初の人工雪として認定された、中谷宇吉郎教授による人工雪の結晶の顕微鏡画像

そして三つ目は人材の豊富さ。北海道大学の学生数は学部と研究所等を合わせて約1万8000人(平成28年度)、教職員は約4000人が働いていて、北海道における知的産業の一大拠点となっている。

そんな北海道大学が、「歴史に学び、生き方を考え、人を育てる」をテーマに北海道大学総合博物館を造り上げた。構想は1966(昭和41)年から検討され、1999年に由緒ある旧理学部本館に総合博物館が誕生。さらに2016年7月には耐震化に合わせて展示スペースが2700㎡から3800㎡へと拡大している。

写真:ノーベル化学賞を受賞した鈴木名誉教授の展示室では、アイデアが生まれてノーベル賞に至るまでや、「チャンスは誰にでも訪れる。それを活かすには、注意深く、一生懸命で、謙虚であること」などの名言が掲示されている。

この巨大な博物館をひと言では説明できない。展示しているのはコレクションのごく一部にすぎない。ただ、各展示室から伝わってくるフロンティア精神が心地よい。

北海道大学総合博物館 鉱物・岩石担当 山本順司准教授
写真:総合博物館の山本順司准教授が目標にしたのは、「自分たちの研究を自慢できる博物館」と「気軽に立ち寄ってもらえる大学」。そんな思いでプロデュースされた博物館だからこそ、来訪者を引き付ける。自身も展示の一部を担い、時折「ミュージアムラボ」で隕石を分析する姿を披露する

写真:中谷博士は雪の美しい姿に魅せられて、雪の研究に取り組み、1936年に世界で初めて雪の人工結晶作製に成功。展示では人工雪の装置や、デザイン帳のような「中谷ダイヤグラム」を展示予定。北大構内には、中谷博士の偉業を記念した「人工雪誕生の地」の碑もある

「もし、学生の時にこんな博物館があったら、進路は変わっていたかもしれない」、そう思わずにはいられないのが、展示室「北大のいまー北大の学び舎」。2016年で140周年を迎えた北海道大学には、文学部、教育学部、法学部、経済学部の文系4学部と、理学部、医学部、歯学部、薬学部、工学部、農学部、獣医学部、水産学部の理系8学部があり、各展示は、それぞれの学部の顔が見える内容となっている。そしてもう一つ、この展示は、学生が互いの学部への理解を深めるきっかけにもなる。

写真左:モニターを見ながら左右の鉗子を動かして外科手術を体験する内視鏡。「医学部」で人気の展示には修学旅行生が真剣に操作する姿も
写真中央:「経済学部」のコーナーで、経済に関する文献と一緒に並んでいた世界各国の地域通貨。展示には経済活性化のヒントも隠れている
写真右:実際に「歯学部」の実習で使われている練習用の器具。白衣を着用でき、机の上には歯の模型や治療用の器具が並ぶ

北海道大学では、大学の枠組みを超えて海外の研究所や公的機関、民間企業、自治体などとさまざまな形で連携や共同開発を行っている。「理学部にはノーベル賞レベルの研究がたくさんありますし、また、大学で最も規模の大きい工学部では、民間企業と連携して研究を具現化しています」と山本准教授。人工結晶や光ファイバー、音声認識ロボット、小型ロケットなど、約2時間程度と言われる所要時間では回り切れないほど、各展示エリアには将来実用化を予感させる技術や研究があふれている。

写真左:工学研究院宇宙環境システム工学研究室が北海道赤平市の植松電機などと共同研究しているCAMUIロケットに関する展示。小型ロケットの実機も
写真右上:A I R D Oが協賛する「北極域研究センター」のパネル展示。中谷博士の積雪や着氷の研究が現代の航空機の安全運航に役立っている
写真右下:震動によって揺れる重りの動きを電気信号に換えてモニターに映し、震度を観測する「短周期地震計」

博物館の見どころの一つは、先人たちが自身の研究のために収集し、残した300万点以上の膨大な学術資料。美術館さながらの美しい生物標本があるかと思えば、大正後期から昭和30年代にかけて、病気の記録や教育を目的に作られた「ムラージュ」と呼ばれる精巧なロウ製皮膚病模型や、世界で初めて発掘された古生物の骨格標本などが多彩に並ぶ。また、博物館では学術標本やサンプルを同定・整理し、さまざまな分野の専門家をサポートする「パラタクソノミスト養成講座」なども開催している。

写真左:化石や骨、鉱石が目を引く「感じる展示室」。標本などを直接手で触れ、五感を使って楽しめる体験型展示になっている
写真中央:昆虫、植物、海藻、魚類、菌類などに分類されている生物標本の数々。展示すると劣化するため厳選してある
写真右:「収蔵標本の世界」では考古遺物、医学標本、生物標本、古生物標本などを公開。鉱物・岩石標本は8月公開予定

博物館1階にある「知の交差点」は、カフェやミュージアムショップ、休憩ラウンジのある複合スペース。「ミュージアムカフェぽらす」の人気メニューは、北海道西興部村にある萩原牧場産牛乳で作った「西興部村のソフトクリー夢」400円。頭をフル回転させた後のクールダウンにぴったりのおいしさ。他に軽食やアルコールなどもそろう。

写真:1日に700本も売れた記録を持つソフトクリーム。コーヒーは1杯¥350

ミュージアムショップでは、北海道大学ゆかりの人物や博物館の展示をデザインした、知的グッズが豊富。博物館限定のデスモスチルスのマグカップや北大生が企画したオリジナルのミュージアムグッズも取りそろえている。

写真左:店内の様子
写真右:人気の銘菓、北海道ミルククッキー 札幌農學校 ¥540(右)、札幌農学校の歴史ミニ冊子入り缶入りバター飴¥648(左奥)

DATA

北海道大学総合博物館 [札幌市]

北海道札幌市北区北10条西8丁目
TEL:011・706・2658
10:00〜17:00(6月〜 10月の金曜のみ〜21:00、カフェは8:30〜22:00 土曜、日曜、祝日〜 18:00)
休日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日が休み)
※2017年1/1(祝)〜 1/4(水)、1/14(土)、15(日)は休館
料金:入館無料 交通:JR札幌駅北口より徒歩10分
http://www.museum.hokudai.ac.jp

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2017年1月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2016年12月1日時点の内容です

raporaはAIRDOが発行する機内誌です。
最新号はぜひ機内でお楽しみください。

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