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"奇跡の粘土"と向き合い唯一無二の器を追求 「工藤和彦」 [旭川市]小さな工房の手しごと/工房探訪

2017年2月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2017年1月1日時点の内容です

写真:黄粉引の片口鉢シリーズ¥2,700〜

北海道に眠る太古の粘土を掘り起こし、オリジナルの技法で、唯一無二の器を追求し続ける陶芸作家の工藤和彦さん。〝黄粉引〟と名付けた代表作は、土の力強い質感と黄色の柔らかな風合いが相まって、野趣と繊細さが絶妙なバランスで溶け合う。

神奈川県出身の工藤さんが陶芸の魅力にのめり込んだのは、高校時代のクラブ活動がきっかけだ。在学中から瀬戸、常滑、信楽など焼き物の産地を巡り歩き、卒業後は信楽焼作家・神山清子氏の内弟子となり学ぶ。その後、滋賀県の福祉施設での陶芸の職業指導員を経て、新しい福祉施設の開設に伴い、窯業の指導員として北海道剣淵町へ。

剣淵町は旭川市から45㎞ほど北上した、上川地方北部に位置する農業の町。工藤さんはここで、それからの作陶活動に欠かせない運命的な土と出合う。

「この粘土は、大陸から偏西風に乗って飛来する〝黄砂〟が堆積した物。地質研究者が分析したところ、2億年前の物と判明したそうです。ダイナミックな地球の息吹によって創り出された、まさに〝奇跡の粘土〟なんです」と目を輝かせる工藤さん。

とはいえ、粒子が細かく、乾燥した時に収縮する、鉄分が多いため耐火度が低いなど、肝心の器作りには不向きな点が多く、試行錯誤を繰り返す中で「もう見切りをつけるべきか」と幾度も心が折れそうになった。それでもひたすら土と向き合い続けたのは「何とかこの土を生かしたい。北海道でしか作れない器を追求したい」という熱い思いがあったからだ。

写真左上:独自に配合した化粧泥、釉薬を付ける
写真左下: 掘り起こした状態の粘土
写真右:蹴りろくろを使い、シンプルで自然なフォルムを描く

焼き締め、灰釉、織部などあらゆる技法を試す中で、最も粘土と相性が良かったのが「粉引」だった。「粉引」とは、褐色の素地を泥でカバーする技法で、その調和から生まれる多彩な変化が魅力だが、粘土と泥の相性が肝心。工藤さんは300通り以上の調合を粘り強く模索し、ようやく粘土の持ち味を最大限に引き出す独自の技法「黄粉引」にたどり着く。粘土と出合ってから丸8年がたっていた。

自分で掘り起こした粘土は、一度、天日で乾燥させ、細かく粉末にしてから練り、機械で真空状態にしてさらに練り上げ、微粒子を密着させる。こうすることで低温でも硬く焼き締まり、土味がありながらも薄くて軽く、強度のある器に仕上がるという。

写真左:窓の外は一面の森。冬はしんしんと降る雪が見える
写真右:2年前に自作した登り窯

旭川市に工房を移した今も、剣淵町へ足を運び、「自然に対する謙虚な気持ちを忘れないために」と手作業で粘土を掘り起こしているという工藤さん。「体力的には厳しいけど、あの瞬間が最もテンションが上がるんです」。〝奇跡の粘土〟と出合ってから24年――。工藤さんは今年も、スコップを握り締め、黄粉引の原点へと向かう。

工房profile

96年、剣淵町で個人作家として独立。01年に工房を当麻町へ移し、代表作の黄粉引を完成させる。
12年、旧旭川温泉を取得し、現在の工房を開設。
17年春には、作品ギャラリーとベーカリーショップをオープン予定

DATA

工藤和彦 [旭川市]

北海道旭川市東山2857-46
TEL:090・6211・1797
10:00〜18:00
休日:無休
交通:JR旭川駅より車で約30分
http://kazuhiko-kudo.com
※直売あり(事前連絡が必要)。
D&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KG、青玄洞などでも販売

EVENT「工藤和彦 作陶展」
2017年4/5(水)〜11(火)
[東京都]西武池袋本店 美術画廊
2017年7/11(火)〜17(祝)
[札幌市]札幌三越本館 美術画廊

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2017年2月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2017年1月1日時点の内容です

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最新号はぜひ機内でお楽しみください。

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