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手仕事のぬくもりに満ちた糸作りから始まる羊毛セーター 「とかち紡 'S」 [幕別町]小さな工房の手しごと/工房探訪

2017年2月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2017年1月1日時点の内容です

写真:マリーゴールドを染料に使った手編みのセーター(左)¥6万4,800、十勝の風景をモチーフにしたニットコート(右)¥7万5,600など

60年ほど前まで、十勝地方の多くの農家は、各戸で数頭の羊を飼育していたという。雪に閉ざされる長い冬、羊毛で糸を紡ぎ、家族の着る服をあつらえるのが、女性の大切な仕事だった。

そんな文化的土壌を背景に、手で紡いだ羊毛を使い、セーターや小物などさまざまな作品を制作しているのが「とかち紡's」。その工房兼ショップは、帯広の隣町、幕別町の畑の中にポツンと立っている。元商店の住居部分を利用した気どりのない造りで、窓の外には十勝の高い空と畑が広がる。「羊毛文化を伝えたい、という思いで始めたのですが、実はこの風景を眺めながら糸を紡いでいるだけで、幸せなんです」と代表の菊地靜栄さんはニッコリ。

メンバーは菊地さんを含め6人で、糸紡ぎ、編み物、織り物、フェルト小物などそれぞれ得意分野を持っている。そのためショップの棚にはセーターやマフラー、帽子などの衣料品をはじめ、フェルトの人形、インテリア飾りなど多彩な羊毛作品がずらり。「どれも手紡ぎの羊毛で、手編みか手織りで仕上げています」と菊地さん。フェルトももちろん、一から羊毛で作っている。

原料の羊毛は、道東・白糠町の羊牧場「羊まるごと研究所」の物をメインに、作品によっては輸入物も使う。淡い柔らかな色味の作品は、十勝の野菜や草花を原料とした草木染め。羊毛から染めの原料に至るまで、十勝・北海道産だけで作られた物もある。

写真左:足踏み式の糸紡ぎ機で、羊毛から糸を作る
写真右:白糠産の羊毛は毛が密でしなやか

中でもぜひ手に取ってほしいのが、手編みのセーター類だ。草木染めの柔らかな色合いで、ふっくらとした質感はいかにも暖かそう。持ってみると、見た目から想像するよりはるかに軽い。
「手紡ぎの糸で手編みすると、空気が含まれて大きさの割に軽く感じるんです。そして、着込んでいくうちにだんだん体になじんでいく。草木染めの色も時と共に少しずつ変わっていって、ホント一生ものの一着になりますよ」

全て手仕事なので、セーター一着を仕上げるのに8カ月ほどかかる。その分、決して安くはないが「それでも首都圏で買う同類のセーターの半額以下だと思います」と菊地さんは言う。

写真:飾りなどに使う草木染めのフェルトボール

手軽な物では、フェルトのポーチやコースターなどがある。こちらはあらかじめ色が付いた輸入羊毛を使っていて、赤や青などのポップな色合い。デザインもかわいらしく、ちょっとしたプレゼントにぴったりだ。「羊毛は使い方一つで、衣服にも小物にも飾りにもなる。知れば知るほど、やりたいことが増えるんです」。現在は服地作りに挑戦中で、「いつか〝十勝ツイード〟を作ってブランド化したいんです。いいでしょ」と朗らかに笑う菊地さん。この小さな工房は、羊毛と同じくらい暖かな空気に包まれている。

写真左:フェルトのポーチは1個¥1,188〜1,944
写真中:糸にする前の草木染めの羊毛1袋¥734
写真右:フェルトボールで作られた羊のオーナメント¥2,700

工房profile

約35年前、羊毛文化を残そうと始まった「おびひろニット」に現代表の菊地さんが参加。
その後も作品作りを続け、10年に趣味を同じくする仲間と「とかち紡'S」を結成。鹿追町で制作・販売を始める。15年11月に現在地へ移転

DATA

とかち紡'S [幕別町]
北海道中川郡幕別町南勢224-3
TEL:0155・57・2922
10:00〜15:00ごろ
休日:木曜日、金曜日、土曜日、日曜日
交通:とかち帯広空港より車で約30分
http://blog.livedoor.jp/pure_soul_1961
※直売あり。十勝川温泉 三余庵、
森のスパリゾート 北海道ホテルなどでも販売

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2017年2月号 AIRDO機内誌「rapora」掲載
※情報は2017年1月1日時点の内容です

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最新号はぜひ機内でお楽しみください。

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